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映画『手紙は憶えている』:記憶は嘘をつく!でも真実の記憶は決して消えない!

投稿日:2019年3月16日 更新日:

認知症をみごとに利用したミステリー映画

邦題『手紙は憶えている』を観ました。

認知症の初期の人が描かれています。

 

認知症理解に役立つだけでなく、

記憶の歪みと人間の心理

さらには、記憶は何層にも上塗りされていること、

奥の奥に刻まれた事実の記憶は決してなくならない、ということを示しています。

 

そして、

結末のショックたるや、言葉を失います。

記憶はここまで嘘をつくのか!!

だけど、

イヤな記憶を忘れ去ることは決してできない!!

 

おお、私たちは過去の過ちから逃れることはできないのです。

 

2015年カナダ・ドイツの合作映画あらすじ

舞台はアメリカの老人ホーム。

90才のゼヴは半年前に妻ルースを亡くしていますが、時々、特に寝起きなどにそのことを忘れて妻を呼びます。

認知症の始まりなのは明らかです。

 

同じホームの入居者で友達のマックスが、ゼヴに約束を覚えているかと聞きますが、ゼヴは首を横に振ります。

ゼヴは認知症以外は元気なのですが、マックスは認知機能には問題ないものの、車椅子が必要なうえ、鼻には管を通したままです。

 

マックスは、忘れても大丈夫、すべてはこの手紙に書いてあるから、この通りすればいいと、一通の手紙と、それを実行するために必要なお金の入った封筒を渡します。

手紙によると、ゼヴとマックスはナチの強制収容所で家族を殺された共通の過去をもっています。

当時の収容所の責任者が偽名をつかいアメリカ市民として暮らしているので、その人物を探し当て復讐を果たす約束をしていたのです。

 

手紙には疑わしい4人の住所が書いてあり、一人一人訪ねて、当人を発見したら射殺するよう指示があります。

 

ゼヴは時々、記憶が混乱しながらも、レンタカーを借り、銃を購入して、順番にチェックしていきます。

一人目、二人目・・・

 

最後の5分間は圧巻!

ネタバラシは、したくても上手くできません_| ̄|○

 

主役は?

妻を失い、認知症を患いながら、復讐を果たす90才のゼヴにスポットを当てた物語です。

当然、主役はゼヴ

ゼヴはピアノが上手です。

認知症でもピアノの前に座ると指が勝手に動き出し、見事なワーグナーを弾きます。

ゼヴの物語が終わると、画面は一瞬暗くなり、一件落着。

 

でも、映画は完全に終わりではなく、ゼヴの入居していたホームのみんながテレビでゼヴについてのニュースを観ている様子が映し出されます。

そこで、ゼヴの友達マックスが、自分の家族は収容所で殺されたんだと、みんなに語る場面で映画は完結となるのです。

 

マックスの穏やかな笑顔にキラリと涙が光りました。

笑顔は復讐の達成感、そして涙は?

自分の家族、自分の過去、・・・生涯にわたる怒りと緊張感からの解放も?

いちいちあげるのはあまり意味がないし、あげきれるものではないでしょう。

 

でも、見落とすことができない、おそらく間違いない涙の理由がもう一つだけあると思見います。

それは、ゼヴとの関係を通して感じるパラドックス、虚無感です。

 

テーマと真犯人

観客がうっかり見落としがちになりますが、ミステリーとして、見事な結末が示されていることに、どれだけの人が気づくでしょうか。

ナチ告発の社会派サスペンスのように見えますが、これは、ナチを舞台に借りた巧妙なミステリーです。

 

テーマは復讐

そして、復讐は静かに成功するのです。

 

この物語の本当の主人公は・・・誰でしょうか?

ミステリーの犯人は誰でしょう?

 この映画が無料で観られます。

 

この作品が超ミステリーなわけ

終盤は、スリル満点、一級品です。

もう、99%の鑑賞者が、これで大ショックを味わい、大満足です。

 

ところが、このミステリーの真骨頂は、冷徹な犯人による相手の弱点を利用しつくした見事な完全犯罪にあります。

弱点とは、人間心理と記憶、そして脳の劣化です。

原題の “REMEMBER” は、この作品のキーワードです。

 

ゼヴが過去を思い出すことがドラマに隠されたブースター(駆動力)になっています。

マックスは、収容所で家族が殺されたことを忘れません。

収容所の責任者も、殺したことを忘れていません。

 

後は、ゼヴが思い出すだけ。

 

やがて、全員が、過去の忌まわしい記憶を “REMEMBER”。

 

REMEMBER (思い出せ)という命令に応えるように、ゼヴが最後に一言つぶやきます。

“I remember.”  そして暗転。

 

原題と邦題:和訳は誤訳

原題は “REMEMBER”、「思い出せ」という命令形ですね。

 

邦題は「手紙は憶えている」と、”The letter remembers.” にしてしまいました。

これは違います。

原題の “REMEMBER” は、「手紙に何と書いてあろうと、人は憶えている。それを思い出せ」という意味で使われています。

 

手紙はマックスの殺人示唆の証拠品です。

マックスは復讐を果たすことが生きがいになっていたことでしょう。

 

成功したことで、生きる意欲を失うかもしれません。

殺人示唆罪になっても満足で、目的達成のすがすがしさを味わっているのでしょうか。

 

いえいえ、復讐なんて、しきれるものではありませんよね。

何をしても、被害の過去は返ってきませんから。

 

それにしても、この映画がドイツとカナダの合作なのは驚きです。

ドイツ人の、過去の過ちをしっかり受け止める堂々とした態度には感心します。

 

過去の過ちには、「もう済んだ」、はないということです。

難しいことですが、他人の過ちは水に流し、自分の過ちは忘れないのって、カッコイイと思います。

生きてる間にこの心境になれるよう、日々頑張る!・・・なんちゃって、こりゃ、簡単に人生終われませんな~

 

REMEMBER という言葉は、ドイツ人を主語にしているのかもしれません。

「あの過去を私たちは覚えています」って。

世界中が、忘れてはいけませんよね。


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  1. こはる より:

    この映画を、amazon primeで私も見ました。
    見終わってしばらく余韻に浸っていました。
    心に残るいい映画ですよね。

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